オールエンド・ネタばれ・独自解釈再構成・IFが含まれます
上記が苦手な方は読むのをやめることを推薦します
君が望む永遠
ひとことだけの勇気
文:太陽
3年前
私は孝之君と絵本展に行くために
駅前で待ち合わせを予定していました
会うことの無い待ち合わせでした
その日私はおめかしをしていて
予定より遅く家を出ました
孝之君も寄り道をしてから行くこととなっていた
待ち合わせには私のほうが早く着いた
私は幼稚園の遠足の朝の集合のように
わくわくしていました
孝之君なんて言うかなぁと思いつつ
待っていました
右の方向から
「遙〜」
と言う声が聞こえました
私は手を振って
孝之君を迎え入れようとしたとき
キキーーーーッ
タイヤがすべる音が聞こえ
孝之君が
「遙!!」
私を突き飛ばしました
ドン!
ガシャァン
そして私が見たのは
さっきまで隣にあった電話ボックスの無惨な姿
と
くの字に倒れこんだ孝之君の姿だった
その後、救急車で孝之君は
柊病院へ運ばれた
病院の廊下は静かだった
目の前の公衆電話が事故を思いださせる
持っていたテレホンカードで
押しなれた番号を押していく
『プルルル、プルルル、プル ガチャ
はい、速瀬です』
いつも聞きなれた声が出た
私は蚊の飛ぶ音のように小さい声で
「・・・水月」
『遙?どうしたの、今日デートじゃなかったの?」
私は幼稚園児のように泣きながら
「だがゆぎぐんが・・・」
その声を聞いた水月は
『どうしたの?今どこに居るのよ』
と私に聞いてきて
「柊病院・・・だがゆぎぐんが・・」
動揺している私に
『今そっちに行くから、待ってなさい
いい?』
私は
「・・うん・・・ひっく」
『親御さんの連絡先も聞いてくるから』
そういうと
電話は切れ
また静かな病院になった
「ひっく・・ひっく・・・だがゆぎぐん・・・」
それからどれくらい経っただろうか
入り口の方からはしる音が聞こえた
「遙?」
長い髪をなびかせ
走ってきた
「遙、孝之は?」
私は遙が見つめる扉の上を見た
手術中
と赤いランプが付いていた
「今、平君が両親に連絡しているから
それに孝之なら大丈夫よ
いつも私の攻撃にも耐えているんだから」
水月の言葉で冷静を少しは取り戻した
バタバタバタ
再び廊下をはしる音が聞こえた
「おねえちゃん!」
病院の廊下を走ってきたのは妹の茜だった
その後ろには40から50歳ぐらいの男性と女性が立っていた
「お姉ちゃん、お兄ちゃんはどうなの?」
と心配でいっぱいという顔で
私に聞くが
「孝之はまだ、中よ」
と私の隣にいた水月が答えた
茜はポッケからテレホンカードを出して
「お母さんたちに遅くなるって伝えておくね」
といい公衆電話へ歩いていった
遅れてこの場に平君も加わった
どうやら茜たちを車で乗せてきてくれたらしい
そして茜と一緒にきた男性が口を開いた
「君が・・・君が涼宮 遥さんかな?」
私の名前を呼んだ
私はかろうじて聞こえるぐらいの声で
「・・・はい・・」
と答えその方向を向くと
女性が
「そう、あの子こんなに恵まれた環境にいたのね・・・」
と嬉しそうな顔をした
「あの子を此処に残して正解だったわね」
今、孝之君のご両親は全国を飛びまわっていた
そしてたまたまこの周辺にきていたらしく
この場に間にあったとのこと
私は
「ごめんなさい」
と一言いった
そうしたら孝之君のお母さんが
「なぜ、謝るの?」
と不思議そうに聞いてきた
私は顔を上げて
「私の・・・私の不注意で・・孝之君を・・・ひっく」
また涙が込み上げてきた
その状態で沈黙が続いた
しかしその沈黙も長くなかった
「遥!」
という私のお父さんの声で
この沈黙は破られた
続く