A.C.195この年、地球に住む人々を震撼させる出来事が起こった。

オペレーション・メテオ

地球圏統一連合の圧政に反発を強めたコロニー居住者の一部が、

流星に擬装した5機の新兵器「ガンダム」を地球に降下させたのだ。

そして、それを切欠に地球ではOZが武装蜂起、

同年末の終戦まで地球圏は破壊と殺戮の渦中に置かれていた。

そして、それを終結に導いたのはやはり、

5機のガンダムとそのパイロットであったのは記憶に新しい。





Operation.2 "Operation Meteor"



A.C.196 X'masEve 衛星軌道上 資源衛星「MO−V」



MO−Vから次々と発進していくチェリーズのMS輸送艇。

そのとき、大気圏突入を敢行しようとしたその機影が次々と爆発していった。

突然の出来事に状況確認に騒がしくMO−Vの管制室。



柿谷「何事だ!」

兵士「大気圏を離脱してくる機影を確認!これは…トールギスです!」

柿谷「トールギスだと?朝陽…?いや…」



MO−Vモニターに映し出される白いMS。

その姿を見た柿谷はリーブラ戦での今は亡きそのパイロットを思い出すが、

かつてその機を駆り、リーブラ戦でMIA(行方不明)となったパイロットに思い至った。



柿谷「はっ、原崎か!」



柿谷のその言葉を裏付けるようにトールギスのパイロットから通信が入る。



豊『こちらはプリベンター《ウィンド》だ。チェリーズに対し武装解除を要求する!』

柿谷「原崎豊、生きていたとはな」

豊『死んでいたさ、だが俺はどうやら「不可能を可能にする男」らしいんでね!』



豊のトールギスVがメガカノンをMO−Vに向けて構える。



豊『柿谷大路!お前の事は立木から聞かされていた。武装を解除し、投降せよ』



豊の言葉には暗に、トールギスVの火力があればMO−V程度破壊できることを示していた。

しかし豊の言葉に柿谷は不適に笑うと、告げた。



柿谷「撃ちたければ撃つがいい。しかし、そうなれば我々の切り札がこのMS部隊だけ出ない事を思い知る事になるぞ」

豊『何?』

柿谷「立木から聞かされていなかったのか?オペレーション・メテオは私が提案したものだ」

豊『!!!X-18999!』



乗っ取られたコロニー、地球降下作戦「オペレーション・メテオ」…

これが意味するもの、すなわち「コロニー落とし」



柿谷「そう、我々はあのコロニーをいつでも地球に落とす事が出来る」



柿谷の自信からすでにコロニー降下のオートプログラムは始動しているのだろう。

いま、ここでMO−Vを撃てばMS降下部隊を阻止する事はできるだろうが、

落ちていこうとするコロニーをとめ、住民を救出する事はプリベンターの力では難しいだろう。



柿谷「貴様こそ、武器を捨てて我々に加わるが良い。だが、私は立木とは違う。

桜香様の一兵士として加わるなら考えてやってもいいが?」

豊『柿谷め…』







金星周辺宙域



太陽へと向かっていく廃棄衛星…ウルカヌスに接近していく輸送船がいた。

里見こだまの乗る惑星間輸送船である。

こだま達は当初の予定を変更し、一刻でも早くウルカヌスにランデヴー出来るコースを辿っていた。

しかし、その事により輸送船とウルカヌスのランデヴー可能時間は僅かになっていたのだ。

輸送船のデッキにはアストロスーツを着込んだ、こだまの姿があった。



佐竹『こだま!準備は良い?』

こだま「うん、…大丈夫!」

宇都宮『ウルカヌスとの相対速度合わせ…』

佐竹『ランデヴーまで3、2、1…』



ドシュッ!



輸送船とウルカヌスの相対速度がゼロになった瞬間、

ロケットハーケンをウルカヌスに向けて射出する。

繋がれたケーブルを伝ってこだまが乗り移る。

しかしその時!



ブッ…



推力が維持できなくなった輸送船とウルカヌスを繋ぐワイヤーが千切れ、

こだまの身が宇宙空間に放り出される。



佐竹・宇都宮「「こだま!」」



こだまの身を案じて思わず叫ぶ二人。

数瞬の沈黙の後、こだまからの通信が入る。



こだま『だ…大丈夫。なんとかたどり着けたよ』



こだまの声が聞こえた事に肩の力を抜く二人。

しかし、今は一刻一秒も時間が惜しいとき、

それをよく知っているこだまは佐竹達に指示を飛ばす。



こだま『みんなは金星の重力カタパルトで帰って。

私はウルカヌスのエンジンを使って戻ります。

それじゃ、金星の女神によろしく!』



地球への帰還軌道に入るためウルカヌスから離れていく輸送船。

しかし、こだまはそれを見送る余裕も無く、手近なハッチからウルカヌス内部に侵入した。



こだま「残留大気のおかげで温度上昇は最低限に済んでいる…でも、ここは沙漠より暑いよ」



ウルカヌスの内部通路を辿って大きな空間に出たこだまはヘルメットを脱いだ。

そこに在る、かつての相棒に挨拶するためだ。



こだま「また会ったね、私のサンドロック」







オペレーション・メテオ



かつてはガンダムの地球降下作戦をそう称していたが、本来は全く別のものであった。

コロニーの回転運動を上昇させ、ラグランジュ・ポイントにおける均衡を破壊し、地球に落とす。

その後、混乱に陥った地球をガンダムによって制圧する。



…これが本来の柿谷大路の提案したオペレーション・メテオの全容である。







X-18999コロニー内部



コロニーの回転速度が速まっていることを擬似重力の上昇により感じ取った山彦達は、

チェリーズの…柿谷大路の目的が本来のオペレーション・メテオである事に気が付き、

コロニーのコントロールルームに向かっていた。

しかし、そこで彼らを待ち受けていたのは!



ひかり「遅かったわね」

つばさ「…やれやれ、目的は同じだった。って事ね」

ひかり「手伝って頂戴、システムが厳重にロックされていてコロニーの安定回復に時間がかかってるわ」



チェリーズの兵を打ち倒した、結城ひかりの姿であった。

コントロールルームの入口をロックすると、コンソールに付く山彦とつばさ。

ひかりが作業をしながら、これまでの経緯を話し始める。



山彦「本隊の地球降下作戦が始まってる。急いだ方がいいな」

ひかり「このコロニーには9千人の人たちが住んでいるわ。それをこの作戦に巻き込むわけにはいかない」

山彦「それでチェリーズに?」

ひかり「柿谷の目的が本来のオペレーション・メテオだって気付いた時には、こうするしか方法が無かったわ」

つばさ「おかげで酷い目にあったし…最終ロックは解除できそうもないね。回路をダイレクトに繋ぐわよ」



コントロールルームの配線を直接引き出し、配線を繋ぎかえだすつばさ。

ガンダムパイロットとして超一流のテロリストとしての技能を叩き込まれた、

彼女達だからこそできる荒業であると言える。



ひかり「しかし、ここまで来るのに時間がかかりすぎてしまった」

つばさ「それで私に攻撃しかけて来たってわけね…

さくっちは?さくっちも先輩と同じ目的で…?」



山彦から「さくっち」、すなわち桜井舞人がアルトロンガンダムを持ち出して

チェリーズに加担している事を知っていたつばさは尋ねる。

しかし、それに答えたのはひかりではなく山彦だった。



山彦「あいつはそんな回りくどい事はしない。」



それは暗に、舞人が山彦達に本当に敵対している事を示していた。



つばさ「よっし、回路変更完了!」

山彦「ダミープログラム起動、姿勢制御プログラム停止」

ひかり「姿勢制御プログラム再起動!」



コントロールルームのスクリーンに映し出されるコロニーが減速をはじめた事を示していた。



ひかり「成功ね」

つばさ「こちら、つばさ!」







衛星軌道



コロニーの制御を掌握したとう知らせは即座にX-18999の外で待機していた、

美魚達を通じて衛星軌道上の豊にも知らされた。

脅迫材料となっていたコロニーというカードが相手の手の内に無い今、豊のやるべきことはただ一つ。



豊「了解した、MO−Vを破壊する!」



トールギスVのメガカノンが最大出力で火を噴き、ビームの巨大な奔流がMO−Vに直撃する。

そして一瞬の後に、MO−Vは爆砕を開始した。



ドゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!



しかし爆発の直前、MO−Vから飛び立ったシャトルが大気圏に突入していくのを、

トールギスのセンサーは察知していたが、フルパワーでメガカノンを発射した今のトールギスには

追撃するだけのエネルギーは残されていなかった。

シャトルの中に居た柿谷は遠ざかるトールギスの方向を見つめながら言った。



柿谷「遅かったようだな。必要数のMSは降下させた、また逢おう原崎」







X-18999コロニー コントロールルーム



ひかり「間に合わなかったようね…」

山彦「コロニーを守っただけでも上出来さ」



本来、ガンダムパイロットはコロニーを守るために戦う。

コロニーを守れたと言うのはガンダムパイロットにとって最大限の戦果でもあるのだ。



兵士『おい!ここを開けろ!ここは既に包囲されているぞ!』



コントロールルームの外ではチェリーズの兵が山彦達を捕まえるべく集結していた。



ひかり「ここまでね…」

つばさ「や、そうでも無いみたい。里見先輩からメールが入っているわよ」



つばさが、こだまからのビデオメールの内容をディスプレイに表示させた。



こだま『たった今、ウルカヌスを地球に向けて発進させたよ。24時間以内に地球圏に戻れると思う』



それを見た山彦がつばさに頼む。



山彦「八重樫さん、里見先輩にメールをしてくれ。ウィングゼロをHES-88の方角に射出してくれって」

つばさ「え?それって…」

山彦「ウィングゼロを宇宙で受け取る…俺から迎えに行った方が早いだろうしな」



山彦の言葉にひかりが教える。



ひかり「…使えるシャトルが4番格納庫にあるわ。」

山彦「ありがとうございます」

つばさ「…OK、送ったわよ。…それで?どうやってこの場から脱出するの?」



3人のこれからの行動は大体決まったとはいえ、

包囲されているという事実には変わりは無かった。



ひかり「そうね…こんなのはどうかしら?」

つばさ「どんな…ぐふっ!…とは違うのだよ、グフとは…」



つばさの首筋にひかりの『円月刀』が叩き込まれていた。



ひかり「大丈夫、峰打ちよ」

山彦「そうじゃなかったら、首が飛んでますって…」



しかし、さらに言葉を続けようとした山彦も、ひかりの視線に言葉を失う。

しぶしぶ山彦は打ち倒されたかのように床に伏せると、

その間にひかりはつばさを抱える。

程なくしてコントロールルームの扉が開け放たれ、

チェリーズの兵たちが中に進入してくる。



兵士「大人しくしろ!…結城特士?」

ひかり「安心しろ、もう片付けた。…暴走は阻止されてしまったがな」



倒した証拠につばさの身柄を見せるひかり。

つばさの身柄を引き取るために兵士が油断して近付き、入口が開くのを山彦は待っていた。

次の瞬間山彦は身を起し、格納庫に向けて走り出していた。







衛星軌道



眼下に広がる蒼い地球、そこに白い巨体が漂っていた。

単機で大気圏を離脱した後、チェリーズの降下部隊を襲撃、

MO−Vを破壊したことでエネルギーをほぼ使い切ったトールギスVである。

そこに一艇のシャトルが接近してくる。

繋がれた通信に、トールギスのコックピットに居た豊は、

読んでいた小説から目を離す事無く言う。



豊「翠ちゃんか…」

翠『はい』

豊「待たせたな」

翠『原崎さん…1年と2日ぶりです。』

豊「……」

翠「……」

豊「ひょっとして、翠ちゃんってストーカー…?」

翠「私の友達の辞書では「ストーカー」という文字は「恋する乙女」と読むそうです」







欧州 ブリュッセル郊外



ブリュッセル郊外のアパートでクリスマスパーティをしていた少女たちは、

宇宙から降ってくるその光に気付くと声をあげた。



かぐら「あれは…MSの降下部隊!?」

青葉「チェリーズが…本当に攻めてきたってこと!?」

かぐら「また戦争が始まってしまいますよ!」



1年間の平和の間に戦いに疎くなってしまっていた地球人類。

チェリーズが降下していっているブリュッセル市街では今頃混乱の坩堝にあることだろう。

しかし彼女達の中に、一人落ち着いて事態の沈静化を信じている少女が居た。



小町(雪村は信じています…せんぱい達が、きっとこれを戦争になんてしないって…)







X-18999を離れ、単機でウルカヌスより射出されたウィングガンダム・ゼロと合流に成功した山彦は、

一足先に地球へと向かっていた。

しかし、その衛星軌道で彼を待ち受けていたのは。





大気圏上層部



舞人「山彦ぉ!」

山彦「舞人…ッ!」



大気圏突入の寸前、山彦のウィングゼロは舞人のアルトロンガンダムの迎撃をうけていた。



山彦「なぜ、チェリーズに加担する!」

舞人「俺は希望の完全平和を認めない!兵器を捨て、戦いをやめればそれが平和なのか!?」



アルトロンの容赦の無い攻撃がウィングゼロを襲う。

かつての仲間を手にかける事に躊躇を残す山彦は防戦一辺倒となってしまう。



山彦「だから桜香の手助けをするのか」

舞人「それが戦う者の魂の拠り所となる!

…お前と俺は同類だ!人との繋がりを否定する事でしか己を見出せない!」



山彦は舞人のアルトロンの放つドラゴンハングをやり過ごしたのもつかの間、

今度はビームトライデンがゼロを襲う。

山彦はゼロにビームサーベルを抜かせ、それを受け止める事になった。



山彦「舞人やめろ!俺達が戦う意味なんて無い!

舞人!朝陽はもういないんだ!朝陽はお前が倒したんだ!」



舞人の脳裏に映る、去っていった不適な微笑をもつ一人の少年。

そしてその後に訪れた喪失…



舞人「ちがう!俺は今でもやつと戦っている!!俺の戦いは終わってなんか居ない!」



2機のガンダムは高度を下げながらも戦い続けていた。







ブリュッセル 地球圏統一国家大統領府



地球に降下したチェリーズは瞬く間に地球圏統一国家大統領府を襲撃。

プリベンターの手引きもあって大統領こそ避難させることに成功したが、

大統領府は完全にチェリーズの手中に収められていた。



ゴゴゴゴゴゴゴ……



轟音とともに崩れていく大統領府…

否、大統領府は崩れ落ちたのではなくその建物をそのまま地下へ降下し、

シェルターになったのである。



桜香「不思議だと思われませんか?

平和の世の中になったのにまだこのようなシェルターが存在するという事実」



地下シェルターに降下した大統領府の一室に桜香と

かつて地球の統一国家の頂点に立っていたクイーン・ノゾミこと、

星崎希望外務次官の姿があった。



桜香「例えるなら、歴史というのは舞い落ちる桜の花弁が踊るワルツと似ています。

平和、革命、戦争が人の意思と関係なく花があるかぎり繰り返し続ける。

ですが、それも私が地球圏のトップとなることで終わりです」



しかし、希望はそんな桜香の言葉を聞いていないのか、

シェルター越しに雪の舞う空を見上げていた。





Operation.2 Quit


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