眠らない街 東京 (渋谷編) 制作 79ERS 作詞 みづき 東京に渋谷という街がある。 ここはいわゆる若者の街として有名である。 日本のみならず世界の流行の発進地として、様々な若者が集まってくる。 それに加えて、ここでは、カラオケ、ゲームセンターなど娯楽施設が集中している。 それが、ますます若者を集めるようになっていた。 この街は昼であろうが夜であろうが関係なく、そのままの姿を映しつづける。 そのため、時間を忘れ、終電に乗り損ね帰れなくなる人間が多数いる。 そんな渋谷の街に1組のカップルが道端でタクシーを待っていた。 男は髪の毛を茶髪だけではなく、ところどころを赤く染めていた。 女は、厚底サンダルに顔から足まで全身を黒くし髪は茶色に染め、眉毛を剃り、目の周り に青いメイクを施していた。 女性の方はひどく怒っており、男性はこれを宥めていた。 「ヘイ! タクシー」 カップルのうち男性が道に手を上げてタクシーを止めた。 タクシーはカップルの前に止まり、後部座席のドアと前方の窓ガラスが開いた。 中から55歳ぐらいの運転手が顔を出した。 「ヘイ! お客さん! どこまで行きましょうか。」 2人は急いでタクシーの後方座席に乗り込んだ。 「足立区まで」 男性は運転手に言った。 「まいど! ありがとうございます。」 運転手は後ろの客を見ながら、料金メーターを押す。 中では、カップルが痴話げんかをしていた。 女性が怒り、男性がそれを収めようとしていた。 「まったく〜。あんたがもたもとしてるから終電乗り遅れちゃったじゃない! どうしてく れるのよ〜」 「ごめん、俺が悪かったよ。」 そんな後方の2人を宥める為に運転手は話しかけた。 「おやおや、そんじゃ、ここでおじさんが小話をしてあげよう。それで機嫌を直してくれな いかな」 「いいわ。チョー感じいいじゃん。さっきからこの男が話をするんだけど全然面白くないの よ。やんなっちゃう」 男性が横槍を入れてきた。 「つまんねぇとは言い過ぎだろうが。そんな事言うなら泊めてやんないぞ」 「え〜嫌な感じ。泊めてよ〜お願い。ねっ」 「分かったよ」 そして、女性は男性に抱きついてきた。 どうやら、喧嘩は治まったようだ。 運転手は2人の様子を見ながら話しかけた。 「さてと話をしますかな。」 「お願い〜」 「頼むよ」 「はいはい、分かりました。」 運転手は2人の姿をバックミラーで確認しながら徐に話を始めた。 渋谷で、1人の男性がションボリと歩いていた。 その人は年齢は50代前後で理不尽な理由で会社から解雇されてしまっていた。 特に恋愛もなく、見合いで仕方がなく結婚した女性が妻としているが、会社を解雇された ことで離婚されてしまった。 会社人間で真面目にやってきたことから特に趣味があるわけではなく、友人がいる訳では ない。 まさに彼は孤独を絵に書いたような人間だった。 「若い頃に戻れるかと思って、若者の町にやってきたが甘かったなあ。空しさを感じるだけ で何にもならんな。ああ、これからどうしようか……」 そのうち、その中年男性は歩き疲れてベンチに座り込んだ。 「ああ……私は50年生きてきたが何にもない平凡な人生だった。このまま人生が終わると 思うと寂しいなあ。ああ、人生をやり直したいなあ」 そういってその男はゆっくりと目を閉じた。 すると…… 「おい、おい! お前、目を開けろ。」 その声に男は目を開けた。 すると、目の前に大男が現れた。 男はびくびくしながら尋ねた。 「あなたはどちら様でしょうか?」 大男は答えた。 「わしは神じゃ。おぬしに用があってな」 「えっ……」 その男はただその場で立ちつくすしかなかった。 大男はその男をじっと見て言った。 「お前はよく50年間不平不満を言わなかったな。それにめんじてお前の人生をやりなおさ せてやろう」 そういって、大男は、その男の頭をなでた。 「はあ…」 「よし! これでよし! これでお前は30年若くなった。これで人生をやりなおせ!」 「は、はい…」 「しかし、1つだけしてはならないことがある。それは『恋』じゃ。あくまでもおぬしは5 0年間生きたんじゃ。その経験も大切にしなければならないぞ」 「こ…恋ですか」 「そうじゃ」 そして、大男は男に顔を近づけ言った。 「もし、それをしたら元に戻るからな。よいな」 「は・はい……」 「それじゃさらばだ。」 大男は男の目の前から消えていった。 しばらくすると、男の声が聞こえてきた。 「おい、おい、そんなところで寝てちゃだめだよ」 気が付くと目の前に警官がいた。 辺りも夜になっており、暗くなっていた。 男は、ゆっくりと起き上がった。 「あっ、すいません」 「まったく……こんな時間にベンチで寝ているとは、けしからん奴だ。今の若者はどういう 教育を受けているんだ。早くしないと終電がなくなるぞ」 そう言って警官はその男を怒った後、すぐにこの場から去っていった。 「わしはどう見ても若いなんて見えんのになあ」 そういって男もベンチから立ち上がった。 男は起きたばかりということもあり、目が冴えないためトイレで顔を洗った。 そして、顔を洗って鏡を見た瞬間、男は驚きの余り声を出した。 「えっ! 信じられん、わしは若返っとるぞ」 髪の毛もふさふさと生えており、顔のしわもなくなっていた。 男は頬をつねってみた。 「痛い! 夢じゃないんだ。わしは若返ったんだ。」 そして、男は、喜びの声を上げながら自分の住むアパートへと帰っていった。 ここは、男が住むアパートの一室である。 男は家の中で、しばらく考えごとをしていた。 (さてと、何をしようか…) 始めのうちは自分が若返った事実を受け入れずにいたのだ。 しかし、時間がたって冷静に事実を受け入れることができるようになった。 そして、長い間考えた結論は… (寝るか…色々考えても仕方がないしな…) とりあえず、夜も遅いので寝ることにした。 男は布団を引き、目を閉じた。 そして… 「ドンドンドン」 激しくドアを叩く音がした。 (ん…何だろう) 男はその音に目が覚めた。 男は眠い目を擦りながらドアに向かった。 「家賃払っておくれよ! いつまで待たせるんだい!」 大家の声だった。 (しまった! 何でこんな時に大家が…どうしよう) 男はリストラになって収入がなかったことから家賃も払えていなかったのだ。 その為、ドアに鍵をかけ、いつも居留守を使って逃れていた。 しかし、今日に限って鍵をかけるのを忘れていたのだ。 男は慌てて鍵をかけようとしたが後の祭りだった。 「居留守を使ったって分かってるんだよ。3ヶ月も貯めてるんだ。いい加減にしなさい!」 ギイィ〜ッ! そう言って大家はドアを開けた。 すると… 「ん? あんた誰だい?」 大家は違う人が住んでいたので驚きの余り声をあげた。 「え、いや、あの〜」 男の方も混乱して言葉がうまく出なかった。 「若返った」なんて言ってもとても信じてもらえない。 とりあえず… 「親戚のものですが…どうやら『旅行に行く』とおっしゃってましたので……」 その場限りの理由で取り繕った。 大家は呆れた表情で言った。 「そう。まったく〜旅行にいける金があるなら家賃払っておくれよ。今月払わなかったら立 ち退いてもらうからね」 大家はドアを閉めた。 (そうだ…家賃貯めてたんだな…忘れてた。働かなきゃな) とりあえず、バイトを始めることにした。 若返ったということでバイト先もすんなり決まった。 その為、経済的に余裕ができる様になった。 それとともに、男は若返ったという実感とその良さが分りはじめてきた。 そんなある日の朝… 「コンコンコン」 ドアを叩く音がした。 (何だろう〜大家かな〜、家賃は払ってるし、何にも問題ないはずなんだか…) 男は首を傾げた。 「ん…。何ですか? 家賃だったらちゃんと払ってますよ。」 男がドアを開けると1人の女性が菓子折を持って立っていた。 男の言葉に女性は戸惑いながら話をした。 「あの〜。 隣に引っ越してきたものですが…」 男は予想外の事態に慌てた。 「あっ、す、すいません。大家かもしれないと思ってつい…」 両人ともお互いを見合って立ち尽くしていた。 長い時間が流れる。 しばらくして、男は沈黙を破った。 「とりあえず中にどうぞ。散らかってますが。」 男は女性を部屋にあげ、お茶を入れた。 女性は座ったきり、顔を赤らめ下を向いていた。 男が女性に見とれながらお茶をいれていた。 両方とも黙ったまま長い時間が過ぎる。 (綺麗な人だ。何でこんな人がこんなところに。私は夢をみているんだろうか) 見とれているうちにお茶は湯飲みから溢れていた。 そのうち、溢れ出したお茶は机から男の膝に… 「あちち! しまった。」 男は熱さの余り跳ね上がった。 女性がそばに駆け寄り声をかけた。 「大丈夫ですか?」 「はい。大丈夫です。すみません。私は昔からドジばかりしているものですから」 その様子に両人に笑顔が溢れていた。 女性が男性に話しかけた。 「あなたって面白い人ですね。何をなさっているんですか?」 男性は頭をかきながら答えた。 「いや。特に何かやっている訳ではないんです。バイトしかしてないんですよ。」 「そうですか。私は歌手になりたくて青森からやってきたんです。」 「そうなんですか。凄いじゃないですか。」 「でも、オーディションに落ちてばかりで、自信をなくしていたんです。今度のオーディシ ョンに落ちたら諦めて青森に帰ろうと思って……」 そう言いながら女性は泣き始めた。 男性はすぐに女性のそばに駆け寄った。 「そんなことはないですよ。何かに向かって挑戦しているってすばらしいじゃないですか」 女性は涙を拭って言った。 「すいません。私この頃うまくいってないもんですから、つい……」 男は女性を慰めるようにいった。 「そのうちいい時代が来ますよ。そんなに悪いことばかり続けばきっといいことがあります って…」 女性はようやく笑顔に戻った。 「あなたって優しい人ですね。東京でこんなに優しい人に出会ったのは始めてです。あなた なら何でも話せそうな気がしますわ」 男は女性の言葉に恥ずかしがり顔を赤くした。 「いや、そんなことないですよ。俺なんて…そんな…」 女性はふと時計を見た。 「あっ! いけない。私、レッスンに行かなくちゃ。それじゃ。私、失礼します。お邪魔し ました」 そういって、女性は部屋を後にした。 男は女性が出て行った後、暫く物思いにふけっていた。 (綺麗な人だったなあ……あんな人が来るなんてついてるなあ。しかも、夢でないなんて……) 男はふと閃いた。 (そうだ! 彼女に歌ってもらう曲の詩を書こう。何にも縛られるものはない今だったら書け るような気がするぞ。) 男は元々作詞をするのが好きだった。 だが、プロになる程の実力はなかったことから諦めてしまい、仕事や家庭で振り回されて、 詩を書くこともなくなっていた。そんななか、仕事に対する情熱もなくなり、家庭に対する 情熱もなくなった今は、まさに詩を書く絶好のチャンスだった。 男は原稿用紙と鉛筆を取り出し、書き始めた。 色々な思いをこめて… 女性に対する気持ち、今の状態でいられる嬉しさ、これからどうしていきたいのか… 男はひたすら時間を忘れ考えた。 バイトをしている時間も… しかし、なかなか若い頃の様にうまくはいかなかった。 長年やっていなかったこともあり、作詞をする能力が落ちていたのだ。 男はそれでも何とかいいものを作り出そうと必死になっていた。 愛する女性の為に… そんなある日… 男は部屋の中で原稿用紙を目の前に考え込んでいた。 「う〜ん」 その時、ドアが激しく鳴った。 「ドンドンドン」 (ん……なんだろう) 男は嫌そうにドアを開けた。 「はい」 開けたとたん女性が喜びながら抱きついてきた。 「キャ〜、嬉しい〜っ! 信じられない。オーディション受かりました!」 男は突然のことに何も考えられなかった。 女性は興奮の余り、自分のしていることが分かってなかった。 しばらくして、男は冷静になり、言った。 「嬉しいのは分かるけど。いきなり抱きつかれたらびっくりするよ」 女性はこの言葉を聞いて我に返った。 そして、男性から慌てて離れた。 「ごめんなさい。私、あんまりにも嬉しかったんで、つい…」 男はにっこり笑って言った。 「まあ、難しいテストに受かったんだ。そんなことをしたくなるのも分かるよ。おめでとう」 女性は男性に対して深く頭を下げた。 「有り難うございます。合格できたのはあなたのお陰です。あなたのことを思うとなぜか落 ち着いて歌えるんです」 男はそれを聞いて顔を赤くした。 「いや。そんなことないですよ。私はどこにでもいる普通の人間なんですから……」 そんな中、女性は机の上の原稿用紙に目がいった。 「これは?」 男は照れくさそうに頭をかきながら答えた。 「いや…趣味で作詞をやってるんですよ。全然下手ですけど……」 女性は作りかけの原稿用紙を見ながら言った。 「そんなことないわ。あなたは、凄い良いもの書けてるますよ」 「でも未完成ですから……」 「完成したのを見てみたいわ」 「いいですよ。出来たらあなたに最初に見せますよ。まあ理想としては、それを誰かに曲を つけて貰って、あなたに歌って貰えればもっといいんですけど……」 女性はそれを聞いて顔を赤くした。 「えっ! 私にですか…そんな…まだまだ未熟なんで…それじゃ失礼します」 女性は部屋を後にした。 女性が出て行って1人になった男は有頂天になっていた。 (あんな綺麗な人が俺の部屋に2度も来てくれるなんて、俺に気があるのかな… そうだったら夢みたいだ……やっぱり若いっていいなあ) 男はますますやる気を出し、原稿用紙に向かった。 女性が歌ってくれるのを想像しながら…… そして、朝から原稿用紙に向かって日が沈み夜になった頃…… パンパンッ! 外で大きな音が響き渡る。 (なんだろう?) 男は驚き、机にペンを置き、空を見上げる。 すると、空に巨大の花火が打ち上がっていた。 (そうだ、今日は花火大会だったな) 男はこの時、1つの考えが浮かぶ。 (そうだ。あの人を誘って花火を見に行こう) 男はコンビニでビールを買った。 そして、男は口笛を吹きながらビールの入っている袋を振り回して女性の部屋に向かった。 部屋をノックしようとドアの前に立った男に…… ラ〜ラ〜ラ〜♪ 部屋の中から歌声が聞こえてきた。 その声は非常に美しいものであった。 (何て綺麗な歌声だ。外の花火なんて目じゃないな) 男はドアの前で聞き入っていた。 暫くして花火が終わり、それと同時に女性の歌も終わった。 男は歌声が終わっても暫くそのまま余韻に浸っていた。 そして… ギイ〜 部屋のドアが開く。 「まあ…」 女性はドアの前に立っていた男を見て驚いた。 「あっ! いやあの〜その……」 男もドアが開いた瞬間、ふっと我に返り慌てた。 両方とも顔を赤くして、何も出来ず立ち尽くしていた。 そんな中、男は手に持ったビール缶を前に出して言った。 「あの〜少し外に出ませんか?」 女性は恥ずかしそうに何も言わずに首を縦に振った。 そして、2人で外の夜道に出ていた。 どこに行くのか決めずにただ歩いていた。 辺りは人はおらず、まさに2人だけの世界だった。 暫く歩いたところで、男は女性に切り出した。 「すいません。花火に誘おうかと思っていたんですが……あなたの歌声に聞き入ってしまっ て……」 それを聞いた女性は顔を赤くした。 「聞いていたんですか……恥ずかしいわ」 男は女性の様子を見て慌てた。 「ごめん……たまたまだったんだ」 「いいんです。私、実は……恥ずかしがりやなんで……それで、人前で歌うと声が小さくな ってしまうんてす。これを直さないといけないのに……」 「でも、いい声じゃないですか。あなたなら立派な歌手になれますよ。」 「なれればいいんですが……」 「出来ますよ! あなたのような綺麗な歌声を持つ人は世界中に誰もいない。もっと自信を 持ってください」 男は力をこめていった。彼女を励ますように… 「そうですか……有り難うございます。あなたの声を聞くと何でも出来そうな気がするわ」 「その意気だ。その意気」 その直後、電灯が消えた。 「キャ〜」 女性は怖さの余り男にくっついてきた。 「大丈夫ですよ。何かあっても私はあなたを守って見せる。」 男は女性を思いっきり抱き締めた。 町内全域が停電になったようで周りは全く見えなかった。 男も表面上は強気の言葉を放っているが内心は怖くてたまらなかった。 暫くして電気がつき、明るくなった。 女性は男に抱きついていたことに気づき、我に返った。 「あっ! ごめんなさい。私怖がりなんでつい……」 男も突然のことでただ立ち尽くすだけだった。 男にとって若い女性に抱きつかれるのは始めてだったからである。 「あの〜大丈夫ですか?」 女性は反応のない男に話しかけた。 しかし、男の意識は余りに舞い上がっていたため、呆然としていたことから女性の声は頭 に入っていなかった。 「チュッ」 突然、女性は男の頬にキスをした。 その直後、男は我に返った。 「はっ! 俺は何してたんだ。」 「ふふふ…あなたって本当に面白い人ですね。」 女性は男の様子を見て笑っていた。 「ははは…」 男も女性が笑うのを見て、つられて笑っていた。 その場には和やかな空気が流れていた。 そんな中、女性は暗い顔に戻り言った。 「私…明日ドイツに行かなきゃいけないの。だから、あなたともお別れしなきゃいけないの」 男は突然のことに戸惑った。 「えっ…そんな。」 「あなたのお陰でオーディションに受かったし、歌手として自信がついたわ。有り難う。あ なたの事は一生忘れないわ」 「待ってくれ。君に渡したいものがあるんだ。それが出来るのは明日なんだ。何とかならないか?」 女性は、しばらく、黙っていた。 そして… 「明日の15時発の飛行機に乗るの。それまで羽田空港に来てくれない。私もあなたに見送 られて行きたいわ」 男は興奮を押さえて言った。 「分かった。15時の飛行機だね。じゃあね」 男はすぐに部屋に返って原稿用紙に向かった。 男は自分の全てを原稿用紙にぶつけた。 今の自分は仮の姿であること。 あなたが本当に好きなこと。 そして、夜が過ぎ朝日が登った頃に… 「できた!」 男は叫んだ。 そう、色々な思いをこめた詩が完成したのだ。 男は即座に女性の部屋を尋ねた コンコンコン! 男は隣の女性の部屋の前に立ってノックをした。 しかし、何も返答は無い。 男はドアに手をかけた。 ギギィ〜 すると、鍵はかかっておらず、ドアが開いた。 しかし、女性の姿どころか、部屋のもの全てがなくなっていた。 昨日のうちに部屋の荷物を運び出していたのだ。 (そうか。空港に行っちゃったのか……) 男は女性の後を追って、すぐに羽田空港に向かった。 しかし、男は自分の体の重さがいつも以上に重さを感じていた。 道の途中で男は体の重さに耐え切れず、息を切らして立ち止まってしまった。 (はあはあ…あれっ? おかしいぞ。どうしたんだ?) 男はトイレに入った。 「なんだこりゃ?」 そこで鏡を見て驚いた。 元に戻っていたのだ。 髪も真っ白になり、所々抜けていた。 顔もしわだらけになっていた。 (なんてことだ……) 男は起きている事態にショックを隠しきれず、ただ鏡の前で、立ちつくすしかなかった。 そんな中、男は鏡を見た。 すると…… 鏡には大男が映っていた。 鏡の中の大男が男に話し掛けた。 「おい、お前!」 男は鏡の中の大男の出現に驚いた。 「あっ! あなたは神様ではありませんか。」 男は驚きの余り声をあげた。 あの時の大男が立っていたのだ。 「うむ。わしはいかにも神じゃ。おぬしはわしとの約束を破ったのう」 大男はふん反り返りながら言った。 「約束?」 男は首を傾げた。 大男は怒って言った。 「馬鹿者! あれほど『恋をしてはならない』と言ったであろう」 男はようやくこの時、約束を思い出した。 「すいません。神様。つい魔が差しまして」 大男は更に言い放った。 「まったく〜。自業自得じゃな。おぬしはあと10年の命だから、気の毒に思って若返らせ てやろうと思ったのに。わしの善意もこれでパーだ」 「私は10年後に死ぬんですか?」 「そうじゃ。おぬしは持病の心臓病が原因で物凄い量の血を吐いて死ぬのじゃ。わしは未来 でそれを見ているもんだから、しのびなくてなあ。」 「そんな…」 男はニ重のショックで言葉を失った。 そして、目から次々と涙が溢れてきた。 男は洗面台に顔を埋めて泣き始めた。 女性とお別れを言えない無念さ、あと10年で終わってしまう自分の人生の空しさ、様々 な思いが涙にこめられていた。 トイレの中では彼1人の泣き声だけが響き渡っていた。 (ちょっとやり過ぎたか……) 大男は男を哀れに思い言葉をかけた。 「ん〜。若者に戻れないこともないが…」 この言葉を聞いた男は顔を上げた。 「本当ですか? 教えてください。お願いします。」 大男は男を見下して言った。 「ただ、わしの力では限界があるのでな。」 男は大男に詰めよった。 「構いません。どんな形でもいいです。若者に戻して下さい! お願いします」 しばらく、大男は目を瞑り、腕を組んで考え込んだ。 そして、大男は目を開け、男に言った。 「分かった。おぬしを元に戻してやろう。だが、16時までじゃ。彼女を見送るのに十分で あろう」 男は涙を流して言った。 「有り難うございます。」 「だが…わしにも立場があっての〜。おぬしの寿命を10年から5年に縮めさせて貰った。よいな!」 「はい! ありがとうございます。」 男は大男に深々と頭を下げた。 「ほら! 空港に速く行け! 彼女の乗る飛行機が飛び立ってしまうぞ」 「はい!」 男は即座に空港に向かってひたすら走った。 大男は男の後、姿を笑顔で見つめていた。 (わしは甘いのう。また天国で始末書を書かねばならぬ。わしの出世は絶望的じゃ) 男の足どりは先程と比べて、非常に軽くなっていた。 若返って、体力が戻っていたのだ。 男は電車とバスを経由して空港に到着した。 時間は14時を回っていた。 「いかん……急なければ」 男は息を切らしながら空港の中に入ってきた。 空港の中では女性がロビーで飛行機の到着のアナウンスを待っていた。 「あっ!」 女性は急いで入ってきた男性を見つけた。 そして、男に抱きついた。 男も女性をしっかりと受け止めた。 息を切らしながら男は女性に言った。 「はあはあ、ご……ごめん、少し来るのが遅くなってしまった。本当にごめんよ」 女性は男の胸の中で泣きながらいった。 「いいの。会いたかった〜。あなたが来てくれるだけで十分よ」 「ちょっと待って」 一旦男は女性を体から離した。 そして、ポケットから徐に紙を取り出した。 それは、昨晩必死になって作った詩である。 男はその紙を女性に渡した。 女性は受け取った後、言った。 「これは何?」 男はにっこり笑って言った。 「君に送る詩だ。昨晩までこれを作ってたんだがなかなかできなくてね。だから、こんなに 遅くなってしまったんだ。」 「これを…私に?」 「そう! 受け取ってくれますか?」 しばらく、2人の間に沈黙の時間が流れる。 そして…… 女性は目に涙を貯めながら言った。 「勿論よ! 当たり前じゃない! 大好き。愛してるわ」 そして、男に抱きついてきた。 男は女性を命一杯受け取めた。 そして、更に男は女性に尋ねた。 「実は……今の姿は本当の姿ではないんだ。本当の姿はもっと醜いんだ。それでも、俺を愛 してくれるかい?」 女性は更に首を縦に振って言った。 「そんなの関係ないわ。それでもいいの。どんな姿してたっていいわ。たとえ人間でなくた って私はあなたを愛してるわ」 それを聞いた男は女性を抱き締めた。 「よかった〜。俺も君が好きだよ。いつまでもこうしていたい。」 そして、両方とも抱きついたまま、2人だけの時間を楽しんでいた。 2人にとって人生最高の時間となった。 しかし、ある声がその時間の終わりを告げた。 「8番ゲートからドイツ、フランクフルト行きの飛行機の準備が整いました。御搭乗の方は 速やかにゲートまでおいで下さい」 これを聞いた男性は女性を離した。 「さあ! 時間だ! 頑張って行ってくるんだよ」 女性は涙を拭って言った。 「ええ、私……辛いときもあなたの詩を読んで頑張ります」 「いってらっしゃい」 男は笑顔で手を振った。 女性は、ゲートに向きを変え、ゆっくりと歩き始めた。 そして、ゲートの手前で立ち止まり男の方を振り返った。 女性は男に向かって叫んだ。 「私〜5年後ここに戻って来ます。その時にあなたは待っていてくれますか〜?」 男は、笑顔で大きく首を縦に振った。 女性はそれを見た後、目から溢れ出た涙を拭ってゲートの方に一目散に走り出した。 まるで、男との思いでを断ち切るように…… そして、男は外に出て、彼女の乗る飛行機が飛び立つのを見ていた。 飛行機が滑走路から空へと飛び立った瞬間、男の目から止めどなく涙が溢れてきた。 そして、涙が頬を伝わって足元に流れた時には、男は元の中年の男性に戻っていた。 「…ということだ。おしまい」 運転手は話を終え、バックミラーでお客の様子を見つめていた。 女性は涙を流していた。 男性の方は、女性の様子を見て、ちょっかいを出した。 「な〜に泣いてんの。お前そんなにこの話に感動したのかよ」 女性は男性のちょっかいを避けるため、突然目薬を取り出した。 「なによ〜。あんたの煙草の煙が目にしみたのよ。悪い?」 男性は女性の様子を見て、してやったりの表情を浮かべていた。 (強がっちゃって、かわいいねえ。俺は煙草なんて吸ってないのに…) そんな中、女性が運転手に尋ねた。 「ねぇ! 運転手さん。彼女はその後どうしたの?」 運転手はふとカーラジオのスイッチを入れた。 ラジオから女性の歌声が聞こえてきた。 「あっ! これってあの有名な曲じゃん。今大人気なのよね。私、このCD持ってるわ」 女性はその曲を聞いた瞬間声を上げた。 「俺も持ってる〜いい曲なんだよな。」 男性は女性の後に続くように言った。 運転手はこの曲をBGMに話を始めた。 「彼女はドイツでオペラを習って、その後、オペラでの美声を認められて、アメリカに渡っ たんだ。そして、アメリカで歌手としてデビューしたんじゃ。今年日本にコンサートで来日 するって話もあるそうなんだが…」 そこへ、女性が横槍を入れるように言った。 「でも中止になったのよね〜。理由は彼女の個人的な理由らしいわよ」 男性はそれを聞いて言った。 「へぇ〜そうなんだ。残念だなあ。」 女性は力を込めて言った。 「なんで来ないのよ〜。個人的な理由なんて信じられないわ」 それに対し、運転手は女性にそっと言葉をかけた。 「まあまあ。お嬢ちゃん。彼女にもそれなりの理由があるんだろう。察してあげなよ」 そして、突然タクシーはアパートの目の前で止まった。 運転手は後ろのドアを開けて言った。 「さあ着いたよ。御乗車お疲れ様でした」 男性は財布から小銭と紙幣を出して運転手に渡した。 運転手はおつりを男性に渡した。 そして、男性は降り際に運転手に尋ねた。 「それで男性の方はどうしたの?」 運転手はにっこり笑って答えた。 「残念ながら男は、その後どこへ行ったのか、誰も知らないんだよ。もしかしたら、もう生 きていないかもしれないなあ」 男性はそれを聞いてタクシーのドアを閉めた。 タクシーはアパートから走り始めた。 (ふうっ、さてと今日の営業はこのくらいにするかな) タクシーは会社に向かって走り始めた。 そんな中、信号待ちにあった。 運転手はふと、煙草に火をつけた。 そして、ふとカレンダーに目がいった。 カレンダーには今日の日付に丸がついていた。 「そうだ。今日は俺の誕生日だ。どうしようかな。また1人寂しく缶ビールで乾杯といくか」 そして、信号が青になったのでタクシーを走らせようとした。 その時…… 「ぐっ!」 突然、運転手は胸を押さえて苦しみ出した。 運転手は急いでポケットから薬を取り出し飲み始めた。 その後は、薬が効いたのか、暫くして運転手は落ち着きを取り戻した。 (はあはあはあ……持病の心臓病がここに来て悪化するとはなあ。 発作が起きる間隔も徐々に短くなるし、薬も効かなくなってる。そろそろ俺もやばいなあ) 運転手が車を発進させようとした。 その時… 「おい! お前」 後部座席から声が聞こえてきた。 運転手はその声に驚き、発進させようとした車を止めた。 そして、恐る恐るバックミラーで後ろを見た。 後ろには大男が座っていた。 運転手は驚きの余り声を上げた。 「か・神様! と・どうしてここに?」 大男はふん反り返って言った。 「おぬしに生涯最後の誕生日プレゼントをやろうと思ってな。」 「プレゼントですか?」 「今すぐ空港に行くがよい。彼女が待っておるぞ。」 運転手は俯いて、ため息をついた。 「神様。プレゼントは残念ながら遠慮させて頂きます。」 それを聞いた大男は、首を傾げた。 「なぜじゃ。おぬしはあんなに会いたがってたではないか。」 運転手は下を向いて話を続けた。 「私の今の姿では彼女は幻滅するのではないかと思うのです。それにまだ私への恋愛が残っ ていたとしても、後何日かで私は死んでしまいます。それが、彼女を余計に悲しませるので はと…」 その言葉に大男は怒りをあらわにした。 「なんじゃと〜。お前は彼女があそこまで頑張れたのは誰のお蔭だと思っている。おぬしへ の愛があってこそじゃ。それをおぬしは見捨てるというのか。馬鹿者が!」 「はあ…」 運転手は相変わらず俯いていた。 大男は更に続けた。 「おぬしの今の姿に幻滅するだと〜。あの曲を聞いてみるといい、あれはおぬしが作った詩 に曲をつけたものではないか。それだけ、おぬしのことが好きだということだ。若者でなく なったぐらいがなんじゃ! 彼女はそんなもの関係なくおぬしを好きに決まっとるだろう。 少しは彼女のことを考えろ!」 運転手は、俯きながら聞いていた。 大男は怒りの表情から笑顔に変え、優しく言った。 「おぬしほど、彼女の好きな気持ちを持つ者はおらん。おぬしは50才後半だというのに、 運転手以外の仕事よりも給料が高く、労働条件の良い仕事があったはずじゃ。だが、この仕 事を選んだのは彼女が空港に来た時にすぐに迎えに行けるからじゃろ。こんなことは他の人 ではできんぞ。もっと自信を持て!」 それを聞いた運転手は顔を笑顔に戻った。 そして、自信を持って大男に言った。 「ありがとうございます。私は間違ってました。今から彼女を迎えに行きます」 大男は顔をより綻ばせていった。 「よし、行ってこい! 人生最後の大イベントを楽しんでこい」 そして、大男はバックミラーから消えた。 運転手は即座にタクシーを成田空港に走らせた。 女性が待っていることを信じて… そして、空港前の道にタクシーを止めた。 すると、ベンチに沢山の荷物を持った女性が座っていた。 運転手は窓を開け、女性に叫んだ。 「どうですか〜? 乗りませんか? お送りしますよ」 女性は荷物を持って、タクシーに近づいてきた。 「ありがとうございます。実は訳があってお金持っていなかったんです。助かりました」 男は外に出て、女性の荷物を1つ1つをタクシーの後ろのトランクに入れた。 そして、女性は後部座席に乗せた。 「あの〜。どこに行きましょうか」 そして、男は女性に行き先を尋ねた。 女性は1枚の紙を渡していった。 「あの〜ここに行って頂けますか?」 「えっ!」 運転手は紙を見て驚いた。 紙に書かれていたのは5年前、運転手が愛した女性が住んでいたアパートだった。 女性は運転手が驚いたのを見て、尋ねた。 「あの〜。何か問題がありましたでしょうか?」 運転手は先程の驚きの声を隠す為に取り繕った。 「あっ! いや…その…え・駅に近いなあって」 女性はその運転手の様子を見て言った。 「運転手さんみたいな面白い人が5年前にいたわ。」 運転手は車を発車させながら女性に尋ねた。 「へえ〜。私みたいな人がいるんですか。見てみたいですね。」 運転手は、笑顔でバックミラーから女性を見つめた。 すると、女性は大粒の涙を流していた。 運転手は女性に慌てて声をかけた。 「お・お客さん。どうしました?」 女性は涙を拭って言った。 「ご・ごめんなさい。私、その人に振られちゃったんです。それで、つい……」 「どうしてですか?」 「私、5年前にその人とこの空港で約束したんです。」 「どんな約束ですか?」 「『5年後に戻って来るからその時にまた会いましょう』って」 「へえ〜それでどうだったんですか?」 「いませんでした。待っていてくれると思っていたのに…」 「そんなに好きな人だったんですか?」 「はい! 私ドイツに渡ったんですがあの人のことを一度たりとも忘れたことはありません でした。それに…」 「それに?」 「空港で別れる時にその人から詩を貰ったの。私、その詩のお蔭で随分励まされました。」 「へえ〜」 「それで、その後ロサンゼルスに渡って、歌手としてデビューできたんです。そのときの曲 は、あの人の詩に曲をつけたものです。その曲を彼に聞いて欲しいと思って日本に帰ってき たんです」 「それで紙に書いてあった住所はどなたのですか?」 「その時、私が住んでいたアパートの住所です。その隣にあの人が住んでいたんです。もし かしたら、そこにまだいるかもしれないから…」 「へえ〜。いるといいですね。」 「でも、いないかもしれない。あの人がいないんじゃこの曲も意味なくなっちゃいます。そ う思うと悲しくて悲しくて……」 「そんなことないですよ。彼だってあなたをまだ愛してますよ。日本のどこかであなたの声 を聞いているはずですよ。」 泣きながらうなだれている女性を必死に運転手が慰めていた。 運転手の言葉女性の失意の気持ちを和らげた。 「ありがとうございます。なんかあなたと話をしているとあの人と話しているみたいだわ」 運転手は更に女性を励ました。 「彼はあなたが来ていることを知らないだけですよ。まだそこで彼は待っていますよ。絶対 そうです。はやく行って彼を驚かしてやりましょう。」 「はい」 運転手の言葉に女性の顔に笑顔が溢れていた。 運転手の目にも涙がこぼれていた。 (神様……彼女に会わせていただき有り難うございます。もう私の人生悔いはないです。こん な幸せな人生になるとは…本当に有り難うございました) 運転手は、すぐにでも「私がその時の男だ」と言って思いっきり抱き締めてあげたかった。 でも、なぜかそれができなかった。 あんなに愛しあった女性だというのに…… そうこうしているうちにアパートにタクシーは到着した。 「お客さん! 着きましたよ。」 女性は深々とおじきをした。 「本当にありがとうございます。無料で送ってくれたばかりではなく、相談にのっていただ いて……」 それに対し、運転手は笑顔でいった。 「いいですよ。ちょうど、お客がいなくて暇だったんで……」 そして、運転手は後ろのトランクを開けた。 「そうだ! 持ちますよ。荷物、重いでしょうから。」 女性は運転手に遠慮をした。 「えっ! そこまではいいですよ。ご迷惑でしょうから。」 運転手は女性の言葉を聞かず、外に出て、トランクから荷物を取り出した。 そして、女性のバックを持とうとした。 その時… 「うっ!」 運転手は女性の荷物を落とし、胸を押さえて苦しみ出した。 そして、口から大量の血を吐いて倒れた。 「だ・大丈夫ですか?」 女性は急いで運転手のもとに駆け寄った。 そして、携帯電話を手にとって救急車を呼ぼうとした。 しかし、運転手は弱々しく手を電話機にあてて止めた。 「もういい。私は重度の心臓病で直らないんだ。次倒れたらもう助からないって言われてい たんだよ。でも、死ぬ前にあなたと会えて本当に良かった。」 女性は、驚きながら男性を見つめた。 「えっ! どういうこと?」 運転手は弱々しい声で女性に言った。 「5年前に君と約束したのは私だ。あの時は若返っていたもんだから分からないかも知れな いが本当だ。今の姿が本当の姿なんだ。本当に君には悪いことをした。ごめん。」 女性は涙を流しながら言った。 「なぜ言ってくれなかったのよ。それだったら、もっと早く会いに来たわよ…」 「私は50過ぎの人間だ。この私の姿を見たら君が幻滅すると思ってな」 「そんなの関係ないわ。私はどんな姿でもあなたを愛しているわ」 「よかった〜。わしも君のことが好きだよ。」 そして、運転手の呼吸はだんだん苦しくなっていた。 その中で、運転手は女性に最後の言葉を言った。 「お・お願い・だから・わし・の・あの時の・曲を・歌って・くれ・ないか?」 女性は泣きながら首を大きく縦に振った。 「分かったわ。聞いててね」 女性はその曲を歌い出した。 いつもより、こころをこめて。 彼の心に届くように…… 運転手は彼女の歌を聞きながら静かに目を閉じた。 安らかな笑顔で…… 夢を追いかけて走り出すまるで翼が生えているように その姿は光り輝いているみたい 夢を見るのに夢中なあなた あなたに惹かれた私に愛をくれますか? 夢を見るほどに追いかけてくれますか? そういいたかったけど結局いえなかった 本当に本当に伝えたかった・・・・ こんな私でも愛をくれますか?好きになってくれますか? こんなにずるくて わがままな私に愛をくれるなら 夢を見るように少しでも追いかけてくれるなら 私はあなたを運ぶ風になりたい 悩んで立ち止まったあなたをそっと後ろから押してあげたい また走り出せるようにと あなたに惹かれた私に愛をくれますか? 夢を見るほどに追いかけてくれますか? そういいたかったけど結局いえなかった 本当に本当に伝えたかった 私は闇になりたい もっと前に進めるようにと ずっとあなたの力になりたい こんな私に愛をくれてありがとう でも不安になるときくらいあるでしょう? ひとつ約束して もし変わらぬ愛をくれるなら姿が変わっても見つけて? 生まれ変わって今と違う私でもまた好きになってくれる? あなたに惹かれた私に愛をくれますか? 夢を見るほどに追いかけてくれますか? そういいたかったけど結局いえなかった 本当に本当に伝えたかった 待つだけなんて嫌だから きっと見つけてくれるのを信じて 負けないくらい光ってみせる だからまた私を見つけて そして大好きな微笑をもう一度下さい 女性は時間を忘れて何度も何度も歌い続けた。 日が沈み、夜になっても そして、彼女の歌声は上空へ上空へ登って行った。 まるで、彼を天国に導くように 〜終わり〜 ●あとがき こんにちは、79ERSと申します。 今回の作品は、男性番のシンデレラストーリーを作りたいと思い制作させて頂きました。 この作品を作る時にかねてから詩を入れようと考えていました。 しかし、私は詩を作ったことがなかったので、思い通りの詩は書けませんでした。 そこで、この作品を作る際詩をさまざまな形で募集したところ、偶然チャットで知り合い ましたみづきさんという方が協力していただきました。みづきさんは、受験生ということも あり、非常に多忙な中でしたが、そんな中でも私に詩を提供してくれました。みづきさんの 詩は、非常に素晴らしく作品によくマッチしており、作品をより引き立ててくれたと思いま す。みづきさんには、本当に感謝を申し上げたいと思います。ありがとうございました。 そして、作品を読んでいただいた方々に、作者としてこの上ない感謝を申し上げます。 ありがとうございました。